ヴァイオリニストの千住真理子さんが使用しているバイオリンは、世界的に名高いストラディヴァリウス・デュランティ。
ストラディヴァリウスは、1700年代初頭にアントニオ・ストラディヴァリによって製作されたバイオリンで、楽器の中でも最も貴重で高価なものの一つとして知られています。
その中でも「デュランティ」は特に有名なモデルで、その音色の美しさと深みは数世代にわたる職人技と絶妙な木材の選定、そして長年にわたる熟成が織り成す特別なものです。
ストラディヴァリウスは音楽家たちにとっては単なる楽器を超え、演奏者と一体となる「芸術品」として扱われ、その価格は数億円にも達することがあります。
デュランティはその中でも音の深さと暖かさ、響きの豊かさで特別な評価を受けており、歴史的な名器として音楽界で圧倒的な存在感を誇ります。
千住真理子さんがこのバイオリンを使用していることは、彼女の演奏に対する情熱とともに、さらにその音楽の深さを引き出していると言えるでしょう。
この記事では、彼女が奏でるストラディヴァリウス・デュランティの魅力を紹介し、その価格がいかにして形成されるのか、またその価値がどのように音楽界に影響を与えているのかについて深掘りしていきます。
千住真理子のバイオリンはストラディヴァリウス「デュランティ」
ストラディヴァリウスとの運命的な出会いから20年『千住 真理子ヴァイオリンリサイタル』横浜・関内ホールにて開催… https://t.co/ygzV7Dvo2O pic.twitter.com/BiypFaiwy9
— PR TIMESニュース (@PRTIMES_NEWS) January 12, 2022
2002年から所有することとなった千住真理子さんのストラディヴァリウス・デュランティ。
彼女がどのようにしてこの名器を手に入れたのか、少し不思議な経緯があります。
ある日、千住さんに電話がかかってきて「ストラディヴァリウスを見せたいのだが、興味はないか?」と言われたそうです。
最初千住さんは金銭的な負担を避けたかったため、思わず「忙しいので、そちらに行けません。残念ですがお断りします」と答えました。
しかしその後、相手は「もし忙しいのであれば、こちらからお持ちしましょう」と提案してきました。
しかも支払いの条件は
①1ヶ月以内に満額を支払うこと
②プロの演奏家として活動していくこと
というものでした。
千住さんはその条件を聞き、心の中で「なるほど、何億という金額であれば、演奏家でない人が手に入れることも可能だ。しかし、それでは競売で値段が吊り上がり、この名器は音を出すことなく終わるだろう。それは悲しいことだ」と考えました。
名器がただの物になり音楽を奏でることがないというのは、非常に不幸なことだと感じたのです。
最初はその提案に腰が引けていた千住さんでしたが、実際にそのバイオリンを手に取って弾いてみたとき、彼女はその音色に圧倒されました。
「これは絶対に誰にも渡したくない!絶対に渡したくない!」という強い思いが湧き上がり、「どうしてもこれを手に入れたい!逃げるように持ち帰りたい」と感じたといいます。
心が決まると同時に、千住さんはその楽器を手に入れるために動き始めました。
彼女は各金融機関に足を運び頭を下げて借り入れの相談をしましたが、どこも高額な貸付をしてくれるところはなく、「返せるメドはあるのか?」と逆に聞かれ、非常に厳しい現実に直面しました。
演奏家という職業は自由業であり長期的な収入の見通しが立てづらいため、金融機関も貸し出しに消極的だったのです。
それでも諦めきれない千住さんに、ある銀行の担当者が「ウチなら貸せますよ」と言ってくれました。
千住さんはその言葉に胸を打たれ、思わず涙がこぼれたそうです。
しかし銀行側からの条件は厳しく、貸付を受けるためには千住さんの兄たち二人を「人間担保」として差し出すことが求められました。
兄の博さん(日本画家)と明さん(作曲家)は、まるで捕虜のように預けられることになり、そのおかげでようやくバイオリンを手に入れることができたのです。
千住さんはこの名器を手に入れるために大きな犠牲を払いましたが、その後彼女の音楽における象徴的な存在となり、その音色は今でも多くの人々に感動を与え続けています。
ストラディヴァリウス「デュランティ」の値段は?
千住真理子さんが所有するストラディヴァリウス・デュランティの購入額は、2億円から3億円程度と言われていますが、正確な値段は公開されていないため不明です。
ストラディヴァリウスはバイオリン界の最高峰とされ、数世代にわたる職人技と高品質な木材を使用した製作によって、その価値は非常に高いものとなります。
名器として名高いストラディヴァリウスは、一般的なバイオリンと比べるとはるかに高額で取引されています。
例えば一般的なバイオリンの価格帯は、通常10万円から30万円ほどで販売されていますが、ストラディヴァリウスとなるとその価格は桁外れのものとなります。
日本でも有名なバイオリニスト・高嶋ちさ子さんもストラディヴァリウスを所有しており、その希少性と価値の高さがよくわかります。
またバイオリンの世界で最も高額な価格が付けられた楽器としては、ヴュータンという名前のバイオリンがあり、その価格はなんと16億円にも達しています。
ヴュータンは非常に希少で音色の美しさも絶賛されることから、その価格は音楽愛好家やコレクターたちにとって衝撃的なものとなりました。
さらにストラディヴァリウスの中でも最も高額な楽器の一つは、バイオリンではなく「ヴィオラ」という楽器である「1719年製のヴィオラ・マクドナルド」です。
このヴィオラはなんとその価格が45億円に達すると言われており、最も高額な楽器として名を連ねています。
このようにストラディヴァリウスやその仲間たちは、その価値が非常に高く、数世代にわたる技術と音響の美しさが価格に反映されています。
ストラディヴァリウスとの違いは?どんなバイオリン?
イタリア北部、クレモナという小さな村があるのをご存知でしょうか。
この村は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロといった弦楽器を作り続けていることで非常に有名です。
クレモナの地方では、地域の人々が代々弦楽器を作る技術を伝承し、村全体がまるで夢のような物語の舞台のように感じられます。
ここでは何世代にもわたって優れた楽器が作られ、その伝統は今日まで続いているのです。
その中でも最も有名な人物は、アントニオ・ストラディヴァリさんという人物です。
ストラディヴァリさんは1644年に生まれ、93歳で亡くなるまで、ほぼ一生をヴァイオリン作りに捧げました。
彼は生涯で200以上のヴァイオリンを制作しましたが、その中で現在でも価値のあるものはわずか数本しか現存していません。
その中で特に注目されているのが、1716年に製作された「デュランティ」という名前のヴァイオリンです。
この「デュランティ」には非常に興味深い歴史があります。
最初の所有者は、なんとローマ法王だったのです。
ローマ法王が所有していたことで、このヴァイオリンは一躍注目を浴びました。
その後所有者は「デュランティ家」という貴族の家族に渡りますが、驚くべきことにこの楽器がデュランティ家に伝わってからは、約200年もの間この楽器の存在はほとんど知られることがありませんでした。
デュランティ家は、この名器を公にすることなく、ひっそりと所有し続けていたのです。
このため長い間「あのローマ法王が所有していたあのストラディヴァリウスは一体どこに行ったのか?」と大騒ぎになり、次第に「幻のヴァイオリン」と呼ばれるようになりました。
そしてフランス革命が近づく頃、この名器は運命的にスイスの貴族のもとに渡り、約80年の間スイスで大切に保管されることになります。
これによりデュランティは再び歴史の中に登場し、かつての名声を取り戻すこととなるのです。
このようにデュランティはその所有者や時代背景によって様々な波乱を経て、現在のように貴重な楽器として扱われるようになりました。
その音色と共に歴史的な価値も併せ持つこのヴァイオリンは、今もなお音楽界で特別な存在として語り継がれています。
まとめ
千住真理子さんが所有しているヴァイオリンは、ストラディヴァリウス・デュランティです。
2002年に2~3億円ほどで購入しました。
ストラディヴァリウス・デュランティは、過去にローマ法王も所有していました。
今後も名器のヴァイオリンで素敵な音色を奏でてほしいと思います。

